こんなトラブルにご注意 解約をもとめた交渉 契約に関する資料

親子電話機1台の支払いにン百万!? 「技術立国」日本の名が泣くよ・・・。

 

 飽和したマーケットのなかで押し進められるサービス競争というのは、あたかも「乾いた雑巾をしぼりつくすような」、あるいは「針の隙間  を埋めるような」厳しいものであるに違いありません。

 年金詐欺しかり、オレオレ(振り込め)詐欺しかり、たしかなサービスの対価として利益を得るのでなく、「身内をだまして」生存を図ろうという人、会社が近頃とみに多 くなったと感じられるのも、右肩上がりの成長を期待できない日本社会の閉塞感、ダイナミズムの欠如と無関係ではないでしょう。

 実は、私の実家も他聞にもれず強引な訪問販売による被害を蒙ることになってしまいました。以下に紹介するのは、その事の経緯と事態解決に向けた経過報告です。「静岡の人も気いつけや」というテレビCMでの難波のおばさんたちの温かい(?)警告があったにも関わらず、私の父母は 価格相場を度外視した買い物を押し付けられていた次第です。

 アルカイダによる拉致「被害」者のことを「自業自得」と一部マスコミは囃し立て ましたが、「自分の権利は自分で守る」「自己責任」の時代が到来したという評価がズシリと心に響いてきます。詐欺というのはもともと存在したわけですから、いきなり日本全国詐欺だらけになったというよりも、経済右上がりの時代の終焉によって、利益確保の先を、これまで目を向けなかった田舎、農村部にも向けるようになったというのが実のところでしょう。

 ふと、ミヒャエル・エンデの名作「モモ」に出てくる「時間どろぼう」のことを思い出しました。平和でのどかで、人と人との信頼、義理人情が第一だった田舎社会にも、都市部と同じような「経済効率」優先の価値観が浸透し始めようとしているようです。それは当然の 時代の流れであるかも知れないけれど、「身内にだまされる」ことが頻繁化していくとなると、なんだかやり切れない思いです。

 94年以来、 小職はほとんどの時間を中国で過ごしてきました。時折、日本の地を踏むたびに目にした「変化」といえば、消費者金融の看板や宣伝がとみに街中で目だってきたぐらいでしょうか。勝ち組になりたいなら合法か非合法かのスレスレのことをすべきだという意見は一部的を射たことだと思いますが、なんだか寂しいなあと思います。


  私の父は現在69歳、静岡県山間部の僻地で零細商店を営む。私、そして妹2人は親元を離れているため、家には母、そして102歳となる祖父の3人のみ が生活している。 (商店スペースは住居入り口に設けている)

 父は2001年11月、ナカヨ製業務フォンの設置を勧めるF社の営業マン(2年前に退社)の訪問を受けた。この頃、父は家屋奥の離れにある部屋との間で連絡が取り合えたらと思い、携帯電話機の導入を検討していた。営業マンの説明では、「この(離れの)部屋はコンクリートで囲まれていますし、屋内とは段違いになっていますから電波が届きません。有線にして業務フォンを導入しましょう」(※実際は、市販の親子電話の「中継アンテナ」で全く問題なく電波は届いた)と強く父に勧めた。彼は支払い金額については「1カ月12,000円が電話機使用代としてNTTの請求書に上乗せされる」とだけ説明。父は彼をNTTからの派遣員と信じ、導入に同意した。

 当時、父は仕事上の支払いをすべて地元の信用金庫で行っていた。電話機使用代についても自動引き落としによる支払いとなっていた。したがって、NTTリースからリース総額を記した資料が郵送されて きてもその通知に 注意しなかった。父本人はリース契約をしたことに気付かなければ、リース残金がいくら残っているかも知らず、この機器を2003年9月まで使い続けた。

(※なお、この時、契約した内容は12000円×84=1,008,000円税50,400円 総計1,058,400円であった。この金額概要を知ったのは2005年3月になってからのことである。 また、この時の担当営業マンはすでに退社して連絡がつかない。)

  2003年9月2日、今度はNTT製FXUという機種の設置を勧めるM社の 営業員の訪問を受けた。相手の身分をNTTの社員であると信じていたことと、2001年11月に導入した機器ではあまり効果がなかった屋内 との通信情況も良くなるという話に乗り、「1カ月18,000円の出費は痛いな」と感じはしたが、機器導入を了承した。営業マンに同行していた男が差し出す書類に促されるままにサインしたが、繁忙な時間であったためこれがリース契約書であることには注意が向かなかった。

 リース会社であるO社の担当者という女性から「引き落とし開始」を告げる電話があり、父は煙に巻かれる思いをした。NTTからの請求があると思っていたのに、自らが直接接したことのない会社から引き落としが始まると知り 、まず耳を疑った。しかし、通信機器に関する支払いのことだと言われ、まずは承諾した。

 数日後、送られてきた返済計画表をみて父は驚いた。84カ月、1587600円というリース期間、総額についてはこの時、初めて知ったのだった。

 それから1年半、祖父(現在102歳)の世話で繁忙な身にあったり、支払いが自動引き落としだったこともあり、この問題を放置してきた。M社の営業マンが挨拶にくれば、機器使用をとりやめたいと告げたいと思っていたが、その後、営業マンからは一度たりとも挨拶の電話はなかった。(業者から提出された2005年2月22日付の明細書には「保守費」という項目があったが、導入から1年半の間、一度たりともサービスを受けたこともない。 なお、市場ではFXUの後継機種AXUが主流になっているという。)

 今年2月初めに帰省した私は、家電量販店で3万円のFAX付親子電話と別売の中継アンテナ (1万円)を設置し 屋内と離れとの間の通信環境をすべて解決し、父母にとっては使い勝手の悪かったこれらの業務フォンを処分したいと思ったが、これが買取した物件ではなくリース契約したものと知り慌てふためいた。1カ月18,900円×18カ月=34万200円を支払った段階で、私は父に代わり、M社、O社に対して総額1,587,600円という金額の詳細を説明するよう幾度となく連絡をとる。送信したEメールは20通近く。かけた電話も何十回。その過程で彼らの回答は 「リースについて真摯な説明を行った」「契約は正常」という強い立場であり、Eメールでの返答 はついに一度もなかった。

 ようやく3月8日、3者による面談が実現したが、「解約してもいいが、解約金は支払ってくれ」というオリックス、「1年半の間、支払いを続けてきたのだから契約は有効」という M社との立場の違いは歴然としてあり、ついに和解案を提示してもらえることはなかった。 なお、この間、しつこく情報開示を求める私の要求に対して業者が提供してくれた資料は、2月22日付の明細書と当時の「発注書」のみであった。(店舗印は押したが署名は父のものではない)

  家族経営の零細商店における通信環境など家電量販店の機器で事足りる。何らメリットのない機器の設置を強行し、それも長期のリース契約を 結ばせるという業者の良識を疑うが、すでに1年半支払い続けてきた過程があるなか、従前の契約のすべての取り消しと、解約料の支払い拒否(でき得れば既支払い金の返還)を訴えることはできるだろうか。


従来からある霊感商法やらマルチ商法に加え、募金詐欺や葬式詐欺など、数々の「振込め詐欺」の脅威にさらされる昨今、私たちの田舎でもその対策にうかうかしていられなくなりました。紳士録の製作会社だの、裁判所から委託された機関だのと、もっともらしい理由で「振り込め」とそそのかす郵便物が頻繁に両親宛てに送られてきます。

今回遭遇した通信機器のトラブルも、一種の「振り込め詐欺」であるという感想を強めざるを得ません。NHKの受信料と聞けば税金に準ずるものと考えたり、 NTTと聞いたら公共事業団体とみなす雰囲気が田舎では根強く、リース契約に対する知識の乏しさと相まって、通信機器関連の詐欺にはほとんど防御体制を備えていなかったというのが現状としてあるかと思います。

私の父母が現実に被害に遭い、似たような被害事例が他にもないかと調べていくうちに気がついたのは、業者の「ゲリラ戦法」ともいうべき営業方法にかなりの共通点があることです。「口だけ達者」な若者たちが精力を注ぎこんでいるのは、「顧客満足」のために自身のスキルを惜しみなく投じるというよりも、相手を煙に巻き、やり込めるための「テクニック」をいかに駆使するかという点にあるようです。


・ 自身の身分証明となる携帯電話番号やEメールアドレスは教えない。

・ リース契約書や発注書には捺印だけを取り付け、署名は彼ら自身が行うケースが多い。
 
・ 2人組でアポイントなしの訪問を行い、顧客が冷静な判断をしづらい環境で話を進める。

・ 自社紹介は詳しく行わず、NTTのロゴを提示するなど、紛らわしい身分を装う。

・ 料金については一カ月の負担額だけを伝え、リース総額や期間については伝えない。

・ リース総額を記した「見積書」はなく、「料金は後で会社から連絡あり」と顧客を煙に巻く。

・ EメールやFAX等、文面に残るかたちでの情報提供は行わない。
 
・ 同業他社の強行なやり口を非難し、自らは例外とばかり信頼を取り付けようとする。


 昨今、通信機リースのトラブルが全国で続発し、社会問題化していると聞きます。「自営業者はクーリングオフが適用されないから解約は無理」という業者側の論理だけが一人歩きし、「泣き寝入り」している被害者も多いことでしょう。  
 自身の経済的損失を防ぐという目的ももちろんありますが、この世に葬り去られそうになっているこの「不公正な」事柄に対して「No!」とまず言うこと――NTTグループによる販売会社の規制を期待することはむろん、事の是非を確かな法律判断 に問うべく準備を進めております。